『京都新聞住まいなんでも相談』

申請後の間取り変更は無理?

近々、新築一戸建て住宅を建てる予定ですが、間取りの変更について困っています。計画当初、間取りを確定するのに時間がかかりそうだったので、後で変更しようと思い、きちんと決めずにハウスメーカーに任せてしまいました。
ところがその後、ハウスメーカーに間取り変更の相談をしたら「変更はできない。もしするのであれば、建築確認申請を取り下げて再検討してください」と言われました。
以前、ハウスメーカーは「若干の変更は可能」と言っていたので、安心していたのですが、建築確認申請を出してしまったら、間取りの変更は全くできないのでしょうか?

(京都市北区・I)



回答

ご質問で困っておられる間取り計画は、家を建てる時一番大切なことです。家族が長年住む家ですから、みんなで時間をかけ知恵を出し合い、専門家のアドバイスを受けながら何度も練り直すものです。
 紙上でのプランは何枚書いても費用はかかりません。建ててから直すのは大変です。一人一人好みも考え方も違うのをまとめ上げ、間取りを決めるのは大変ですが、楽しいことでもあり、家族が一緒に同じ事を考える機会でもあります。
 今回は、後で変更しようと思って確認申請を出した後、任せていたハウスメーカーに相談したら間取りが変更できないと言われた、とのことですね。建築確認制度は、今大きく報道されている事件もありますので、詳しくは行政にお尋ねいただくとして、大まかに言うと、建物の設計図書を土木事務所などの建築課や民間の確認検査会社へ出し、建築基準法などの法令に合っているかどうかを確認してもらう制度です。
 一度出した設計の変更も当然ありうるのですが、面積、構造、配置などを伴う大きな変更なのか、広い部屋を二間に区切る程度なのかで変わると思います。具体的な内容は不明ですが、一般の木造や鉄筋コンクリート造の住宅と違って、プレハブメーカーでは部材を工場で造るため、型式認定、製造者認証を前もって大臣認定しています。このため形式から外れる変更は、しにくくなります。一度申請窓口に相談に行って、補正で済むか、取り下げて出し直しが必要かを直接たしかめられたらよいでしょう。いずれにしても十分検討され納得できる間取りが決まってからの申請をお勧めします。

1級建築士 阪東 孝治
2006年5月31日掲載



車庫上の住宅、大丈夫?

昨年、1階が車庫で、その上が居住スペースになっている一戸建て住宅を購入しました。鉄筋コンクリートなので、見た目には頑丈な造りをしています。しかし、先日、近畿地方で起こった地震で家がきしむように大きく揺らいだので、家族が心配し始めています。運良く建物に破損はなかったのですが、普通の住宅とは異なり、土台部分が空間になっているので、やはり将来に向けて補強したほうがよいか悩んでいます。私が住んでいるような住宅は耐震的に大丈夫なのでしょうか。

(京都市北区・I)



回答

9月5日夜に2度続いた地震、大きな揺れが長く続き、多くの方が怖い思いをされたことと思います。

家は家族を守るシェルターですが、大地震の場合は、その建物が壊れて被害を及ぼす心配が出てきます。相談者も普段便利に使っておられる車庫ですが、先日の地震で心配になられたようです。築年数や階数、大きさ、上部の構造が分かりませんが、よく見かける1階が車庫で上に木造住宅が建っている家と考え、お答えします。

1階が鉄筋コンクリート造り(以下、RC造と言う)、2階以上が木造の建物は次のような性質があります。1階RC造部分は剛性が高い(硬い)ので変形しにくい。2階以上木造部分は剛性が低い(軟らかい)ので変形しやすい。
このように各階の剛性(硬さ)が不連続となる建物は、地震の振動において軟らかい階に変形が集中する傾向があり、よってその部分に損傷を受けやすくなります。
建築確認では、当初このような形態の建物は、1階のRC造部分のみ構造計算を要求され、上部の木造2階建て部分の構造計算は不要でした。しかし、近年は木造部分が2階建てでも、3階建て木造住宅のように構造計算を要求され、安全性を確認するようになっています。

ご質問の建物は昨年購入されたとのことですが、新築であれば木造部分の構造計算もおこなわれ、安全を確認されているはずです。もし中古物件、もしくは何らかの理由で木造部分の構造計算がされていない場合は、専門家に相談し(現在、都道府県により無料や補助で耐震診断を実施している所があります)、補強の必要を確認するのがよいでしょう。

1級建築士 阪東 孝治
2004年9月29日掲載



壁から音・・・欠陥住宅では?

2ヵ月ほど前から新築の一戸建て住宅(木造)に住んでいます。最近、幼い娘が「家がパチパチする」と言ってきたため、屋内を調べたところ、かすかな音ながら、確かに壁などからパチパチと音が聞こえます。家族は気味悪がって「欠陥住宅では」と心配しています。ひび割れや腐食などは見当たらないのですが、音が鳴りやまないのはなぜですか。また音を消すことは可能でしょうか?

(右京区・T)



回答

時々聞く話ですし、田舎の旧家や古い旅館に泊まった時、天井からピシッと音がしたと言うのと同じ現象ではないでしょうか。

近ごろ「欠陥住宅」の言葉が独り歩きしてしまっているように思えます。住宅は建物自体も大切ですが、中で人が安全安心に暮らせる事が一番の目的です。近年、住宅健在も安く早く大量に、製品の多くが石油製品を原料とするプラスチックやビニール製で造られています。見た目は木目が印刷してあったりで、素人には見分けがつかないくらいです。しかし、シックハウスの問題が叫ばれ、昨年、法律でホルムアルデヒドなど有害物質の含有量が規制されました。

木造でも柱や梁、下地材に使っているのが、一本の木から製材した無垢材か、薄い材を何枚か張り合わせた集成材か合板かでも違います。また、双方に利点があります。

ところで、お尋ねの音ですが、推測しますと天井裏や壁の中に無垢の木材が使われていると思われます。十分乾燥した材を使うのですがグリーン材と呼ばれる人工乾燥していない材を使うことも多くあります。そうすると、完成してからも自然乾燥していく過程でピシッと音を立て、ひび割れするのです。木は調湿するので、10.5センチ角3メートルの柱1本でビール大瓶3本分くらいの水を吸うことができるそうです。

乾燥ひび割れは木材特有の現象で、構造計算では安全率の中に含まれます。ですから、相談者の家が無垢材を多く使った家だとしますと、自然の力のあるそれは欠点ではなく、住む人の環境に良い家だと言えます。

音はだんだん少なくなると思いますが、しばらく観察され、それでもご心配の時は木造に詳しい建築士などに実際に天井裏などを見てもらってください。

1級建築士 阪東 孝治
2004年5月12日掲載



上棟式のご祝儀の額は?

過日、新築する家の上棟式を開いたときのことです。私は、職人さんたちへご祝儀(一律5千円)を手渡しました。しかし数日後、父親に祝儀の金額を聞かれて答えると、「少なすぎる。非常識なやつだ」と怒られてしましました。当日は現場監督、棟りょう、現場作業員の全員に渡したので結構な出費でしたが、父には理解してもらえませんでした。私は妥当な金額だと思ったのですが、一般的に上棟式で手渡す祝儀の相場はいくらぐらいなのでしょうか?

(向日市・A)



回答

新築される時、ご相談者のように困られる人も多いのではと思います。自分の家を建てることは大事業ですから、無事完成を神に祈り、関係者も心を一つにして取り組むこととなります。着工前に地鎮祭、次に上棟祭(式)、竣工式とあるわけですが、今日では内容はさまざまで、簡素化もされています。

上棟式は、どちらかと言うと職人さんたちに「ご苦労様、完成までよろしく」といった、慰労の意味が中心になって来ているようです。お酒や料理を振る舞う習慣がありましたが、飲酒運転もできませんから上棟式では、乾杯などを形式的におこない、ご祝儀を渡し、お神酒と折り詰め弁当などを持ち帰ってもらうことが京都近郊では多いように聞きます。なかでも悩むのは、ご祝儀の金額です。

職人さんにとって、棟上げはそれまで木工場で墨付けし、切って削って準備した木材が現場で皆の前に堂々と形となって姿を現す日なのです。匠の技と心意気を示し、喜んでもらい、認められることこそ、明日からまた施主のために釘1本打つにも一生懸命やろうと言うことになるのだ、と理解しています。

上棟式は、施主と造り手の心と心の心情的な絆を深め、しいてはより良い家造りができる知恵がつまっているように思います。地域性や建物の規模、用途などにより違うと思いますが、5千円から数万円、聞いているなかでは1万円が多いようです。

年配者や最近建てられた人に尋ねるのもよいでしょう。いずれにしても、額ではなく感謝の気持ちではないでしょうか。

1級建築士 阪東 孝治
2003年11月5日掲載



老朽化住宅の断熱工事は

今から約40年前に建築した木造2階建て住宅(一戸建て)に住んでいます。最近、老朽化もあると思うのですが、居住していると夏の暑さや冬の寒さに耐えられなくなってきました。そこで、建物に断熱材を施そうと考えているのですが、何分古い住宅なので、耐震などを含めて工事をしても大丈夫か心配です。アドバイスお願いします。

(伏見区・S)



回答

京都は特有の蒸し暑さと冬の底冷えがあります。ご質問の方も築40年ほどとなり、すき間風も入るようになり、冷暖房の効率も悪くなってきていることでしょう。断熱工事をされるのは大変良い事です。

一般的には室内の壁をめくって壁の中へ断熱材を入れます。また天井裏や床下へも同時に施工されると良いでしょう。財団法人・省エネルギーセンターの資料によると、冬暖房20度の場合、外壁より約34%、天井約24%、窓とドアから約10%、熱が逃げていく、とあります。

合わせて窓を複層ガラスサッシなどに入れ替えると効果が上がります。価格だけでなく、住む人の健康に良い材料選定をお勧めします。また、そのとき耐震等を含めて工事をしても大丈夫か、ご心配のようですが、壁や床をめくったとき一緒にできますので、かえって同時施工のほうが良いと思います。

木造住宅では土台や柱の下部が腐ったりシロアリの害のある場合は、強度が低下してしまいます。耐震性を向上させるため、柱や梁を修繕し補強します。壁や筋違いという斜材の増設や、新たな部材を取り付ける必要のある場合もあります。

平成7(1995)年1月17日の阪神淡路大震災で亡くなった人の8割は家屋の倒壊が原因でした。倒壊した家屋の多くが昭和56(1981)年以前の耐災基準によって建てられ、手入れされていない建物と言われています。

京都市では昭和56年5月31日以前の旧建築基準法で建てられた木造住宅の簡易耐震診断を区役所などの窓口で受け付けていますので今回は工事着手前に先にこの制度を利用されて、その結果を基に計画されることをお勧めします。

1級建築士 阪東 孝治
2003年5月21日掲載



気になる外壁の膨らみ

木造2階建ての一戸建て住宅に住んでいます。この家は築3年目で、外壁の塗材に弾性タイルを使用しています。先日、家の南側の外壁にぷっくりした膨らみを数ヵ所みつけました。膨らみの中は空洞のようで、押すとへこみます。外壁すべてを調べましたが、膨らみがあるのは南側の壁だけでした。これは一体どういう現象なのでしょうか。放っておいてよいものか、また補修が必要とすれば、その方法を教えてください。

(山科区・T)



回答

近ごろ住宅やマンション等の外壁を、今回ご質問の方の家のように弾性タイルで仕上げることが多くなってきています。タイルと聞きますと、陶器や磁器のタイルを連想してしましますが、今回の場合のタイルは壁にローラーやはけで塗っていきます。ペンキを塗っていくのと同じ要領です。

25年くらい前は硬いタイプの吹き付けタイルが使われ、その後、ひび割れに追随する単層弾性タイルが出てきました。これでも3~5年ほどで硬くなってしまいますので、下の主材と別に、上に伸び縮みする上塗り材を塗る複層弾性タイルが研究され、各塗料メーカーから多く出ています。色やパターンもいろいろと選べますし、塗り替えにも適しています。

ところで南側の壁に膨らみが数ヵ所あり心配されているとのことですが、弾性タイル塗装材の裏側に空気か水が入って膨らんだと考えられます。

木造住宅ということですので、モルタル下地とのすき間から空気が入り、日当たりの一番良い南側ですので膨張してきたのでしょう。しかし万が一、雨水が浸入して膨らんだ場合は、大変です。この場合は、膨れの上部にひび割れなど雨水の入る原因が必ずありますが、なかなか見つからないこともあります。

まれに室内の風呂場などの水漏れが原因で、外壁方向へ出てくることもあります。

しばらく様子を見られ、増えたり大きくなってきたら要注意です。その時は膨れのできるだけ下側を針の先で突いて、中が空気なのか、水が入っているか確かめてみるのが良いでしょう。

どちらにしましても、今以上に大きくなった場合は、設計監理された建築士さん、建てられた工務店さんに相談され、見ていただかれることをお勧めします。

1級建築士 阪東 孝治
2002年6月5日掲載



マンション壁の亀裂が心配

おととしの12月、新築マンションを購入して入居しました。今年の4月になってから、バルコニーの手すり側壁面に亀裂が入っているのに気付きました。亀裂は外壁のタイルや目地にも通っており、建物内部にまで及んでいるのではないかと心配です。販売会社に連絡すると「あらかじめ建物のゆがみを考えて設計施工しているので心配ない」と言われました。どうにも納得がいかないのですが、このまま放置しておいて大丈夫なのでしょうか。またこういった問題の公的な相談機関があれば教えてください。

(草津市・O)



回答

新築マンションの生活にも少しずつ慣れてきて、バルコニーに出ている時にふと気が付き、心配になった-。ご相談の方もそのようなことと思います。

構造上、バルコニーの手すり壁は、建物本体より持ち出した床の先端に立っています。そんな構造ですので、バルコニーの手すり壁に亀裂が入っていることはよくあります。手すり壁は通常、マンションの構造体力を受け持つ壁ではありませんので、このようなヘアークラックと呼ばれるコンクリート特有の亀裂は構造的には問題がないと考えられます。

しかし、鉄筋コンクリートが劣化していく一つの要因がヒビ割れです。またコンクリートが徐々に中性化して内部の鉄筋をさびさせることも劣化の進む要因なので、亀裂には注意を払った方がいいでしょう。

中性化から考えると、止水する必要があります。一般的には0.3ミリ幅程度の亀裂なら雨の侵入は少ないと考えられていますが、0.1ミリ程度の亀裂でも条件によっては、建物内部まで雨水や空気中の炭素ガスなどが侵入し中の鉄筋を早くさびさせる原因となるからです。

タイル目地にも亀裂があるとのことですが、マンションのほかの部分にも同様の亀裂が見つかることも考えられます。分譲会社のアフターケアに関する取り決めや建築施工会社の瑕疵保障期間など、気になる個所は管理組合を通して確認、協議され、納得のいく調査を依頼されるといいでしょう。

公的な相談機関ですが、京都市の場合市の住宅部で受けています。また欠陥住宅京都ネットでは弁護士や建築士、研究者などが相談を受けているようです。ホームページでも見ることができます。

1級建築士 阪東 孝治
2001年7月5日掲載



新築住宅のアレルギー対策

このたび家を新築することになりました。 コンクリート造りの2階建てにする予定ですが、子どもがアトピーなのでアレルギーの発症を少しでも抑えられる家にしたと思います。設計上どのような点に配慮すれば良いでしょうか。

(大津市・U)



回答

新居が完成し、喜んで入居したのもつかの間、家族のだれかが発疹(はっしん)や頭痛、吐き気などの身体の不調を訴えられる話をよく聞きます。アレルギーをご心配の方は設計と材料選定が特に重要です。

鉄筋コンクリート造りの家をご計画とのことですが、窓もアルミサッシと考えられますので気密性の高い住宅になると思われます。換気が大切ですので、空調に頼らず、自然換気できるように風の流れや位置関係などを考えて窓を設けます。

外壁に直径10センチほどの換気口をつけたり、サッシ上部に換気ガラリを設置するのも有効です。コンクリートは新築から何年間か水分を出すと言われていますが、外周壁面に断熱や結露対策をすることも必要です。材質に注意して断熱材を施工することで、結露だけでなくカビやダニの発生も防ぐことができます。

次に室内の下地材によく使われる合板はEO、FcOなどの規格の、いわゆる接着剤にホルムアルデヒドなどの少ない建材を使用することです。仕上材もビニールクロスではなく、最近見直されてきている自然素材の織物や和紙クロスを使うのも良いでしょう。

天井や床板フローリングもスギやヒノキなどの無垢板材を使って無塗装としたり、塗装したい場合には植物から作られた自然系塗料を使ったりすることをお勧めします。建物だけでなく、流し台や洗面化粧台に使われている合板にも注意してください。また畳やカーテン、カーペット、家具からも化学物質が出ることもあります。

化学物質過敏症の80%はホルムアルデヒドが原因との研究結果も最近出てきています。建築費用は少し高くつくかもしれませんが、家族の健康第一を考えていただきたいと思います。

1級建築士 阪東 孝治
2000年9月7日掲載



屋上ルーフガーデンの注意点

このたび自宅を建て替えることになりました。三階建て住宅にする予定ですが、敷地が狭く庭のスペースが取れないので、屋上にルーフガーデンをつくりたいと考えています。 法的な規制や注意点があれば教えてください。

(西京区・Y)



回答

ガーデニングがブームになっています。ご相談の方のように、建て替える時は敷地を有効に使いたい。そして心安らぐ緑を屋上やベランダにつくれないだろうかと考えられる方は多いと思います。街中を気を付けて歩いてみますと、それほど多くはありませんが屋上に植樹された建物が見られます。古くは明治・大正期に百貨店の屋上に庭園が設けられて人気を呼んだようです。

さて屋上にルーフガーデンを計画するに当たってですが、法的に特に難しい規制はありませんが、土を屋上に置きますので、その重さを、普通の土で1立方メートル当たり1.8トンとして通常構造計算時に荷重としてプラスする必要があります。

花や芝生を植えるならば土は10センチ厚ほどで良いと考えられますが、高さ1~3メートルに育つ中・低木を植える場合、少なくとも30センチ厚ほどの土を盛ることになります。この場合、雨の後に水を含むことを考えると、1平方メートル当たり540キロほどになると思われます。パーライトなどの混じった軽量土を使うと有利です。

また屋上に屋根や柱を設けると、建築床面積に入ったり、構造物と見なされる場合もあります。注意点としては屋根の防水と排水、それと保水と耐根です。保水が悪いとせっかくの植栽を枯らせてしましますし、水やりも大変です。木の根は見た目より強く、細い根のすき間に入り、やがて根が太くなってヒビ割れさせ、雨漏りの原因となりますので一番注意が必要です。

屋根の温度を抑えることができ、環境にもやさしいといわれるルーフガーデンで四季の木々の手入れを楽しみながら愛でて下さい。

1級建築士 阪東 孝治
1999年12月2日掲載



工務店依頼か設計事務所か

このたび土地を購入し、家を建てることになりました。これから設計に入る段階ですが、工務店に依頼するか、別の設計事務所に依頼するか、決めかねています。

それぞれに設計を依頼した場合の特徴について教えてください。

(山科区・H)



回答

家を建てることになり、土地の購入もすみ、ホッとひと安心のところですが、今回の質問の方のように、ここではたと迷ってしまわれることが多いようです。家族の希望をうまく形に表してもらえるだろうか、自分たちのイメージ通りの家が出来上がるだろうかと考えてしまうのは当然のことと思います。この先何十年と暮らす家です。後悔するより先に時間をかけて考え、取り組まれることをお勧めします。

では、こうした大事業をだれに任せたらよいでしょうか。まず工務店の場合ですが、工務店に一括で依頼すればすべてやってもらえ、設計費も少なく計上しているところが多いようです。楽な半面、いったんすれ違うとそのまま進んでしまうことがあります。

一方、設計事務所の場合、設計料はかかりますが、家を建てる地域の法令や規制、敷地条件や施主の希望を考え合わせてくれ、時間をかけてプランを練ってもらえます。現場管理もしてくれるので、第三者のチェックも期待できます。

手順としては、工務店はすべて仕切ってくれますが、設計事務所に依頼するなら、つぎのように進めていくのがよいと考えます。①自分の家のイメージ作りをし、それに近い家を見つける。②その家を設計した人に会って話し合う。設計料もきちんと聞き、フィーリングが合えば依頼する。③出来上がった設計図と仕様書で工務店へ見積もり依頼し、合意できる工務店と工事契約し着工する。設計料については一度相談された方がよいと思います。思ったより案外安いかもしれません。

また、いずれの場合も得意分野に注意された方がいいでしょう。住宅中心のところや店舗を多く手掛けているところ、また公共施設をメーンにしているところなどがあります。構造的には鉄筋や鉄骨を主体としていたり、木造が得意だったりします。

以上、それぞれの違いについて述べましたが、どちらにしてもご自分のフィーリングに合った工務店なり設計事務所を見つけることが必要です。信頼でき、感性の合う人に出会うことが家造りの成功の第一歩でしょう。

1級建築士 阪東 孝治
1999年4月8日掲載



ひどい床下の湿気を取りたい

5年前、郊外に別荘を建てました。
床高にしてもらうはずが、設計者の考えで床下低く(30センチ)なってしまいました。
そのせいか湿気がひどく、2~3年は畳のカビに悩まされ、今も押入れや廊下、洗面所などの床がしけっています。
市販の湿気取りでは効果がなく、通気口を開けるには土台の柱が邪魔になります。
除湿機も考えましたが、別荘に行かない長い期間、回し続けられるものはありません。
なんとか湿気をなくす良い方法はないでしょうか。

(向日市・K)



回答

床下の湿気がひどくお困りのようです。楽しく過ごすために建てられた別荘も、これではゆったりした気分にはなれませんね。さて現地を見ていませんが、ご相談内容では建てられた所が郊外とありますので、敷地内や、その近くに湧き水があったり、谷水が地中を通っている場合があります。

新築時に高床を希望されていたのが、設計の段階で床下30センチになったとのこと、敷地調査や打ち合せが重要なのですが、不十分だったようで残念です。反省点でしょう。

床高に関しては、建築基準法施工令22条に、地面より床の上面まで45センチ以上とあり、外周基礎5メートル以下ごとに300平方センチメートル以上の換気口を設けることと定められています。住宅金融公庫の仕様書でも基礎高30センチ、換気口は4メートル間隔を基準としています。

換気口の数や大きさは不明ですが、いずれにしても床下の通気が悪いことが原因と推測されます。そこで、このひどい湿気をどうやって解決するかですが、現実的な方法として、まず外の雨水が床下まで浸み込まないよう、家の周りにU字溝を設け排水を良くします。見栄えを考え透水管を埋設することもできます。

ご質問の中で、土台が邪魔とありますが、やはり基礎の土台下に換気口を設け、床下全体に風が通るようにすることです。タイマーで運転できる換気扇がありますので、広さに応じ、そこへ何台か取り付けると良いでしょう。また床下に木炭や竹炭を敷くのも一案です。

ランニングコストがかからず湿気を吸着し、乾燥時に放出します。カビや微生物を調整できるエコロジーな材料です。
これらの方法をうまく組み合わせていただくことにより、現在の湿気を改善することができるでしょう。

1級建築士 阪東 孝治
1998年11月5日掲載